2017年6月10日土曜日

2017/6/10:My Family history 〔4〕 学柳明圓沙門 その3

もう一つの資料、「大阪現代人名辞典」に移ります。これは、大正2年の発行資料です。実はこの系統で、もう一つ新しいものが紛失してしまったようです。それには、学柳の長女、小丘が女流画家として紹介されていたと記憶しているのですが、残念です。
この人名辞典の記述は、前回の蔵前校友録の記録と大差ありませんが、愛知県での活動に触れています。
『村岡学柳君 大阪府の人、田中政一の二男にして、明治七年四月三十日 京都烏丸高辻に生る。長じて後村岡天山の養子となり入てその姓を冒せり。幼少より繪畫々好みしが長ずるに及び、遂に畫を以て身を立てんと志し、今尾景年に師事し、専ら斯道を修めしが、後又た志を転じて図案家たらんとし東京工業学校図案撰科に入る。研修数年技大に進む。卒業の後、群馬県に赴き、物産地図案奨励のため、周く県下を遊歴せり。後愛知県勧業課の招聘に応じ、農商務省井手技師に随行し、大日本図案協会商議院審査員、京都図案会評議員となり、斯界に其の名を知らるるに至れり。従来各地展覧会博覧会等に作を出して江湖の称賛を博し、賞牌褒状を受けたること数回に及べり。曾って明治三十五年東京高島屋呉服店に在るの時、宮内省の下命に依り先帝陛下並びに皇太后陛下の御大礼服考案の光栄に浴せし事あり。その後 同店の大阪本店詰めとなり、その図案部主任として経営に任ずること十年余に及び氏しも大正二年一月辞して同店の顧問となり、傍ら図案の畫に応じつつあり。(大阪府豊能郡櫻井谷村大字南刀根山)』

「江湖の称賛」の意味を解説しないと、いけないかも知れませんね。「江湖」というのは、中国の「江西省」と「湖南省」、ちょっと狭く考えても「長江と洞庭湖」を意味して居ます。それが転じて、「世の中」「世間」というような「広範囲」を意味するようになりました。「広く世間から称讃を得た」という風に解釈して下さい。

「学柳明圓沙門」は、生涯何回引越をしたのか、木瓜爺直接調べたことがないのですが、父や母に聞いたところでは、戸籍の移動をたどるのが極めて困難だったそうです。戦災も絡んで(謄本の置かれていた役所が空襲などで焼けた)、相当苦労し、大阪で不動産業を営んでいた方にもたすけて頂いたようです。
 私の記憶では、長女登貴こと「芳桂院 小丘大姉」は、東京の生まれだったように思います。つまり、高島屋東京店に勤めていた頃に結婚し、長女が誕生したのでしょう。この伯母の戒名に院号が付いていますが、是は、弟の「徹心居士」が、菩提寺の和尚さんに相談して付けた戒名です。伯母は、晩年、国分寺で「芳桂塾」という書道の塾を開いていましたので、それを記念したものです。また「小丘」というのは、画号です。木瓜爺が付けると「芳桂院 登貴小丘大姉」となっていたかもしれません。ちょっと簡略化したようです。

 長男 唯矣こと「唯法徹心居士」は、大阪で生まれています。先ほどの資料によると、
大正二年には「櫻井」にいたようですね。

 学柳はこの移動期間は、全て「借家」だったようです。大正二年に高島屋を辞めたあと、大正六年にまた「十合」に務めたことは、前回に書いております。櫻井では通勤も大変でしょうから、また大阪市内に舞い戻ったと考えられます。
 正確なことは分かりませんが、おそらく昭和に入ってからでしょう。東住吉区田辺本町に、自宅を建てます。終の住まいとして建てたものでしょうが、この家は、地面が借り物でした。これは、当時としてはよくあった形です。ただ、それなりに考えたのだろうなと思うのは、玄関は別になっていますが、構造体としては、2軒の家を一つにしてありました。二世代住宅のはしりとして作ったのか、或いは遺族が家賃収入を暮らしのたすけに出来るように考えたのか・・・実際には、後者として役だっていました。
 祖母の話ですと、オシャレだったそうですが、それがちょっと渋いのですね。着物を作る時、同じものを少なくとも二枚同時に仕立てるのだそうです。一枚を洗いに出しても、もう一枚のほうを着て出かける・・・つまり、他人には「いつでも同じ格好をしている」と思わせるのだそうです。

 享年五十六才は、今だと若すぎますね。

 学柳が死んで3年後、木瓜爺はこの家で生まれました。主屋の方の庭が広くて、大きな石榴の木が庭の中央にあり、井戸の回りには、イチジクの木が二本ありました。と、まあ、実が食べられた木のことはよく覚えています。

 「学柳明圓沙門」の巻はこれで一応終了とします。つれあいは「元柳明美大姉」。学柳の戒名を頂いた時に、同時に頂いた戒名です。本名が「ゲン」で、通称が「美代子」であった祖母です。二つの戒名を一つの位牌に彫ると、「柳明」の一致に美しさを感じます。つけてくださった和尚さん、頭良いなあ・・・










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